事業の被害を、平時の対策で小さくする。

最終更新:2026年6月

「安全を確保する」が人の命を守る備えなら、「被害を減らす」は事業そのものの損害を抑え、早く復旧できるようにする備えです。

災害の種類によって有効な対策は異なりますが、データバックアップや代替拠点のように、どの災害にも共通する対策もあります。まず共通の対策を押さえたうえで、自社に関係するハザードごとの対策を確認しましょう。

共通の対策(すべてのリスクに有効)

データバックアップ

あらゆる災害・障害に対する最も基本的な備えです。

  • 3-2-1ルール——データのコピーを3つ2種類の媒体に、うち1つは遠隔地に保管する。
  • クラウドバックアップの活用——自社サーバーが被災してもクラウド上のデータは残る。自動バックアップの設定を確認。
  • 復元テストを定期的に行う——バックアップは「取っている」だけでは不十分。実際に復元できるかを年1回以上テストする。

重要書類・データの保全

  • 契約書・権利書・許認可証のコピーを遠隔地またはクラウドに保管する。
  • 顧客リスト・取引先情報を紙とデジタルの両方で持つ。
  • 保険証券・口座情報など、被災直後に必要になる書類はすぐ取り出せる場所にも保管。

非常用電源の確保

  • 無停電電源装置(UPS)——サーバーや重要機器に設置。停電時にデータを安全に保存して正常シャットダウンするための時間を確保。
  • 非常用発電機——事業規模に応じて導入を検討。燃料の備蓄・定期点検も必要。
  • ポータブル電源・モバイルバッテリー——最低限の通信・照明を維持するために備蓄。

代替手段の準備

  • リモートワーク環境——事業所が使えなくても業務を継続できる体制。VPN・クラウドツールの整備。
  • 代替拠点の検討——取引先・同業者との相互利用協定、コワーキングスペースの事前確認。
  • 通信手段の多重化——固定電話・携帯・IP電話など、異なる回線を持つ。

地震への対策

「安全を確保する」で扱った人の安全(家具固定・避難経路)に加え、ここでは事業資産を守り、早く再開するための対策を整理します。

  • 建物の耐震診断・補強——旧耐震基準(1981年以前)の建物は特に優先。自治体の耐震補強補助金を確認する。
  • 生産設備・機械の固定・免震——アンカーボルトでの固定、免震台の導入。精密機器は免震装置が有効。
  • 在庫の積み増し・分散保管——主要な商品・部材の在庫を通常より多めに持つ。複数拠点への分散保管も有効。
  • 配管・ダクトの耐震支持——ガス管・水道管・空調ダクトの支持金具を確認。破損すると二次被害(漏水・ガス漏れ)につながる。

水害への対策

浸水の深さと速度によって被害規模が変わります。ハザードマップで自社の想定浸水深を確認し、その深さに応じた対策を取ります。

  • 止水板・防水壁の設置——出入口・地下への入口に設置。簡易型は数万円から導入可能。
  • 電気設備のかさ上げ——受電盤・配電盤・空調室外機を想定浸水深より上に設置。地下にある場合は移設を検討。
  • 重要物品・在庫の上層階保管——1階に置く必要がないものは2階以上に移動する。
  • 排水ポンプの設置——地下や低地にある事業所では、浸水時の排水手段を確保。
  • 土のう・水のうの備蓄——緊急時の応急止水用に備蓄。水のうはゴミ袋と水で即席に作れることも周知。

サイバー攻撃への対策

自然災害だけでなく、サイバー攻撃も事業を止める大きなリスクです。ランサムウェアによる被害は中小企業でも増加しています。

  • OS・ソフトウェアのパッチを適用する——脆弱性を放置しない。自動更新を有効にし、更新状況を定期確認。
  • ウイルス対策ソフトを最新に保つ——定義ファイルの自動更新を確認。無料ソフトで済ませず、法人向け製品を検討。
  • オフラインバックアップを持つ——ランサムウェアはネットワーク上のバックアップも暗号化する。外付けHDDなど、ネットワークから切り離したバックアップを定期的に取る。
  • パスワード管理とアクセス制御——使い回しをやめ、多要素認証を導入。退職者のアカウントは速やかに無効化。
  • 不審メールへの注意喚起——従業員向けに具体例を示した注意喚起を定期的に行う。

早期復旧のための備え

被害を完全に防ぐことはできなくても、復旧までの時間を短くする備えは可能です。

  • 重要設備の代替部品を持つ——故障頻度が高い部品、調達に時間がかかる部品を事前にストック。メーカーに納期を確認しておく。
  • 代替調達先を確保する——主要な仕入先が被災した場合の代替を、平時から探しておく。1社依存を避ける。
  • 復旧業者の連絡先を整理する——建物修繕、設備修理、IT復旧など、災害時に依頼する業者をリスト化。相見積もりの余裕がない災害時に慌てないために。
  • 相互応援協定を結ぶ——同業他社・近隣企業と、被災時に設備・人員・場所を融通し合う協定。商工会議所や業界団体を通じて検討できる。
  • 仮設での営業手段を考える——テント・仮設店舗・移動販売車など、建物が使えない場合の暫定営業手段。キッチンカーで営業を再開した飲食店の事例もある。

次のステップ

本ページは一般的な対策の概要を示すものです。事業所の構造・立地・業種により必要な対策は異なります。 具体的な工事・設備導入については、専門業者にご相談ください。