災害後の資金繰りは、平時に決まる。
災害で事業が止まると、売上はゼロになっても固定費は出ていきます。従業員の給与、家賃、借入金の返済——。手元資金が尽きれば、再建のチャンスが来る前に廃業に追い込まれます。
「災害後にどうするか」ではなく、「災害前にどう備えるか」が資金面の明暗を分けます。
手元資金を厚くする
災害後の公的支援や保険金は、支給まで数週間〜数ヶ月かかることがあります。その間を自力で乗り切るための手元資金が必要です。
目安
- 最低1ヶ月分の固定費(人件費・家賃・返済額)を現預金で持つ。理想は3ヶ月分。
- すぐ引き出せる形で保管する。定期預金だけでは不十分。普通預金・当座預金に一定額を確保。
中小企業の現実
中小企業白書によると、手元資金が月商1ヶ月未満の中小企業は約3割。こうした企業は、1ヶ月の事業停止で資金ショートに陥るリスクがあります。まず自社の「耐えられる期間」を計算してみましょう。
損害保険・共済で備える
自然災害による損害は、火災保険だけではカバーできないことがあります。保険の内容を確認し、必要な補償を追加しましょう。
主な保険・共済の種類
| 種類 | 補償内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 火災保険 | 火災・落雷・風災による建物・設備の損害 | 地震・水災は基本補償に含まれないことが多い。特約の確認が必須 |
| 地震保険 | 地震・噴火・津波による損害 | 火災保険とセットでしか加入できない。補償額は火災保険の30〜50%が上限 |
| 水災補償(特約) | 洪水・土砂崩れ・高潮による損害 | 火災保険の特約として付帯。浸水リスクのある事業所は必須 |
| 利益保険(企業費用・利益保険) | 事業中断による逸失利益・固定費 | 建物・設備の損害とは別に、「売上が止まる損害」をカバーする保険 |
| 小規模企業共済 | 経営者の退職金制度。災害時の貸付制度あり | 掛金は全額所得控除。廃業時の生活資金にもなる |
| 経営セーフティ共済 | 取引先の倒産時の貸付。解約手当金あり | 掛金は損金算入。災害直接の補償ではないが、連鎖倒産の備えに |
保険の見直しチェックリスト
- 火災保険に水災補償は付いているか?(ハザードマップで浸水リスクを確認)
- 地震保険に加入しているか?(火災保険だけでは地震被害は補償されない)
- 補償額は再調達価額(新品で買い直す金額)か、時価か?
- 利益保険は検討したか?(建物が直っても営業再開まで売上はゼロ)
- 保険証券の保管場所は安全か?(コピーをクラウドにも保管)
融資枠を事前に確保する
災害後に融資を申し込むと、審査に時間がかかります。平時のうちに枠を確保しておくと、いざというとき素早く資金を調達できます。
- 当座貸越契約――あらかじめ設定した枠内で、必要な時に必要な額を借りられる。利用しなければ利息は発生しない。
- コミットメントライン――銀行が融資を約束する契約。手数料はかかるが、災害時に「借りられない」リスクを排除できる。
- 日本政策金融公庫の融資制度――中小企業向けの災害関連融資がある。平時に取引関係を作っておくとスムーズ。
「借りられるうちに借りる」という考え方
災害後は信用状態が悪化し、新規の融資が難しくなることがあります。手元資金に不安がある場合は、平時のうちに融資枠を確保しておくことが重要です。使わなければコストは最小限です。
災害後に使える主な公的支援(概要)
詳しくは有事の対応・再建で解説しますが、「こういう制度がある」と知っておくだけでも備えになります。
- セーフティネット保証4号――災害で売上が減少した中小企業向けの信用保証。別枠で保証が受けられる。
- 災害復旧貸付(日本政策金融公庫)――低金利の融資制度。災害ごとに特別枠が設定されることもある。
- なりわい再建補助金――被災した施設・設備の復旧費用を補助(補助率3/4等)。大規模災害時に措置。
- 税の減免・猶予――申告・納付期限の延長、被災資産の損失計上など。
次のステップ
- 自社のリスクの大きさを地域のハザードを知るで把握し、必要な保険の水準を判断する。
- 資金面の備えをBCPに組み込むには対策を計画するへ。
- 実際に被災した場合の資金繰り支援は有事の対応・再建で確認する。
保険・共済の内容は商品により異なります。具体的な補償内容・掛金は、保険会社・共済窓口に直接ご確認ください。 公的支援制度は災害ごとに内容が変わる場合があります。